宮崎駿監督作品『となりのトトロ』の導入部にはトラックに満載した荷物をがたがた言わせながら引越し先に向かう家族の姿が描かれています。同作品は1988年公開。作品の年代設定は1958年という事になっており、丁度引越し業が生まれた時代です。作中では業者の手を借りずにトラックを借りて自力で荷物を運搬する昔ながらの引越しが描かれているんですね(ちょっとマニアックな話ですみません)。ジブリ作品には引越しの描写がある作品が多くって『借り暮らしのアリエッティ』(小人の引越し)『千と千尋の神隠し』(引越し先に行く途中で異界に迷い込む)『魔女の宅急便』(魔法使い見習いの単身赴任)などが挙げられます。
『ハウルの動く城』はドアがあちこちに繋がったり、城ごと移動してしまったりするので引越しと言えるかどうかは謎(原作『魔法使いハウルと炎の悪魔』では引越しのシーンが確実にある)ではありますが、同じジブリ作品でも作中の年代や世界の設定によって引越しの形態が全く違うのでなかなか面白いんです。
これらの作品には「家族」が必ず出てきます。中には入院で家族の成員が欠けていたり、家族自体が赤の他人の集合体であったりする場合があるのですが、家族一緒に、或いは家族に見守られて引越しを行う主人公たちの姿にはどこか懐かしいものがあります。しかし、現実の家族は単身赴任、配偶者との死別、離婚別居、独身率の上昇などで以前のような強固結びつきが無くなり素人のみでの引越しを行うのが難しくなったのが現況です。また、高齢化によって荷造りや荷ほどきをできる成員がいない場合もあり、各業者はそのニーズに合ったプランの提供に余念がないと言われています。
単身者向けの引越しサービス
引越しを1人でする事例は存外多いものです。もともと1人暮らしであった場合の引越しや、進学で遠方に行く際の引越し、単身赴任、病気療養の為の転地、家族との死別生別によって広すぎると感じるようになった場合の引越し等がその好例です。単身者の引越しは必ず転居先未入居とは限らないのが特徴で結婚やルームシェア、実家への帰還など既に他の家族もしくはそれに準ずる人の荷物が入っている場合も多いですね。
しかし、引越し業で単身者と言った場合は1人暮らしを始める人の事を示すのが慣例のようです。単身者の引越しは当日の荷物は少ないが働き手も少なく(家族や友人が必ず手伝ってくれるとは限らない。皆自分の生活がある)諸手続きや荷造り荷ほどきを1人でしなければならず本人に負担がかかるケースも少なくありません。荷物量が少ないゆえに大きな輸送車を借り切ってしまっては却って高くついてしまうことも単身者引越しの特徴となります。
そこで登場するのが単身者向けの引越しサービスです。輸送価格が低く抑えられ、スタッフのサポートを受けられるため需要が高くなっています。業者によってサービス内容は若干違うが単身者向けの梱包材セットの販売や、荷造り荷ほどきのサービス(但しオプション)、各手続きの代行などを行ってもらえます。また、家具や家電のレンタルサービスもあり、買いそろえの手間が省け、転居したその日から快適な生活を送れるので利用を検討するべきサービスです。女性の引越し用に女性スタッフだけによる作業をしてくれるレディースパックというサービスもあって人気となっています。
また、老人ホームへの入居などの特殊な転居をサポートしてくれるサービスもあります。既に他入居者がおり、移動時の動線や家具配置などに施設側も入居側も気を張る事項ですが、プロの手助けでぐっと負担を減らすことができます。
家族向けの引越しサービス
家族とは血縁、婚姻などによって互いに密接なつながりを持ち、同じ世帯に暮らす社会的集団の総称です。時にペットや何らかの事由で経済住居を共にする他人をも家族と呼ぶことがありますよね。成員の数やその関係が異なっていても家族は家族であり、引越しには全員の総意と協力が必要になってきます。概して成員が多ければ多いほど荷物の量は増え、転校等の手続きの兼ね合いから、引越しは大掛かりになる傾向にあります。引越し業者の公式サイトの多くは家族向けのサービスのページと単身者向けのサービスのページを分けていますが、家族単位での引越しと単身者の引越しに必要なものは似て非なるものであるからでもあります。
引越しの際に家族が必ず同時に住居を引き払うとは限りません。仕事の都合などで誰かが先に新居で暮らしはじめるケースもあります。その場合2回引越しをすることになりますが、業者によっては期間を決めて同一家族の期日ずれの引越しを割り引いてくれるところもあります(クロネコヤマト等が代表例)。また、住居を新築改築したり、リフォームをしたりする場合、施工期間中は居住不可能になるため他の住居に仮住まいをしなければならないことがあります。
その際にもやはり複数回の引越しをしなければならず、手間と費用がかさむものであるのですが、専用のプランを提供してくれる業者も少なくありませんので覚えておいても良いかと思います。また、部分リフォームをする場合、スペースの問題や破損の恐れから置き所の無くなった家財を預かってくれるサービスもあるので担当者に相談してみるとよいでしょう。
企業・法人向けの引越しサービス
一般の家庭でも大仕事の引越しですが、企業の移転ともなると社員総出で行わなければならないプロジェクトとなります。法人の移転はそれによって商機を得ることができるようになる可能性がある半面、コスト面での問題や立地条件の変化や1時的な業務の停止によってそれまでの顧客が離れていくリスクがあるため、社運をかけた賭けになる可能性が大きい。社内でチームを作ったり、会議を幾度も開いて討論したりして行う点などが一般家庭の引越しとは少し違うところです。企業移転の事由は様々であるが、従業員が増えて手狭になったからというケースも多いようです。
クロネコヤマト等の引越し業者は法人向けのサービスも行っており、荷物の運搬は勿論、移転が必要か、社内のレイアウト変更で問題を解決できるのかのアドバイスや、スケジュール調整、移転後のレイアウト変更等細やかなサービスを行ってくれます。法人向けの移転サービスを行っているところはクロネコヤマト、西濃運輸、日通こと日本通運、アート引越センター、サカイ引越センター等があります。無論、これはあくまでもよく知られている大手の1例で中小規模の業者でも法人向けのサービスを行っているところは多いです。見積もり額や土地勘、サービス内容などをよく確認して社内会議で諮ることが必要です。
引越しにまつわるデーターは社員全員がよく把握しておくことが必要なので事前説明をしっかり行いたいものです。移転をすることで交通手段が変わる社員も少なくないので予め交通費の試算を行っておくことも大事な準備となります。